皮膚バリア強化方法とセラミドクリーム?
前回の記事では、アトピー性皮膚炎を中心に皮膚バリアと皮膚コンディショニングについてお話ししてきました。記事を最初から読んでくださっている方なら、これらの内容がすべて互いに関連していることをご理解いただけたかと思います。
簡単に言えば、皮膚がその機能を自ら適切に果たすための諸条件が存在します。非常に多様な要素が互いを調整しながらコンディショニングされている、ということです。そのため、皮膚疾患の治療においては、皮膚自身のコンディショニングをいかに回復させるかが核心となり、これに役立つ多様な介入オプションを選択的に活用できるのです。
ある意味、たかが皮膚。「血の巡るところに気も従う」と言うように、皮膚末梢の血流を改善さえすれば自ずと機能する、と軽く片付けてしまっても良い内容かもしれません。しかし、皮膚バリア機能がどのような過程を経て構成されるのかをもう少し詳しく見ていくことで、皮膚疾患治療に対する多様なインサイトが得られるのではないかと期待しています。
皮膚バリアと脂質
今回の記事では、皮膚バリアの話を脂質(lipid)と関連してもう少し掘り下げてみましょう。
皮膚の構造
皮膚を段階的に拡大した図です。ご存知の通り、皮膚は表皮、真皮で構成され、さらに表皮は下から基底層、有棘層、顆粒層、角質層に区分されます。下部にある基底層から角質細胞が分化し、特有のユニークな構造(brick and mortar:レンガとモルタル)を形成して角質層を作ると、前回の記事で何度かお話ししましたね。
皮膚バリア機能において、この角質層(stratum corneum、略してSC)は非常に重要視されるテーマです。SCについて様々な資料を調べてもう少し詳しく学習すれば、診療にも役立つことでしょう。
SC層の重要性
とにかくSC層を拡大して見ていくと、角質細胞と角質細胞の間の空間を埋めているものがあります。まるでセメントのように角質細胞をぴったりとレンガの壁のように結合させる役割を果たすのが脂質(lipid)です。
SC層でよく用いられる代表的な脂質を2つ示しています。1つは遊離脂肪酸(free fatty acid、略してFFA)です。もう1つはスフィンゴ脂質で、その中でよく知られている名前がセラミド(CER)です。高価な化粧品でセラミドの話を聞いたことがあると思いますが、それがここから来た話なのです。
肌タイプと脂質
肌タイプを話す際、一般的に乾燥肌と脂性肌に分けることが多いですが、厳密に言えば、乾燥肌と脂性肌は対義語ではありませんよね。乾燥肌とは、皮膚バリアが破壊され、水分を保持できる細胞内NMFが不足し、TEWL(経皮水分蒸散量)が多く、乾燥してひび割れるなどの状況を指します。一方で、脂性肌は水分が多い状態を指すわけではありません。
出典: Epidermal surface lipids
皮膚に存在する油分は大きく2つに区別する必要があります。(1)皮脂腺由来、(2)SC由来。この2つに分類されます。脂質の組成も違いが見られます。SCを構成する脂質は、前述の通り遊離脂肪酸、セラミド、コレステロールです。皮脂腺から分泌される脂質は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレンなどです。
保湿剤と皮膚バリア
前回の保湿剤編で、保湿剤をhumectant、occlusive、emollientに分類できるとお話ししました。少し大まかではありますが、比喩で説明すると、humectantはNMF、occlusiveはsebum(皮脂)、emollientはSC lipid(SC脂質)と、このように対応付けられます。つまり、皮膚バリアと保湿に関与する様々な成分の生理的効果を模倣して保湿剤が作られていると理解できるでしょう。
SC脂質とアトピー
アトピー患者では、これらの脂質にどのような変化があるのでしょうか?健康な人とアトピー患者における様々なセラミドサブクラスの比率を比較して示しています。セラミドの組成比率に違いがあることが一目でわかります。つまり、健康な人とアトピー患者では、SC脂質を構成するセラミドの種類と組成比率に違いがあるということです。
このような組成の違いは、おそらく皮膚バリアの物理的構造の脆弱性にも関連があると考えられます。セラミドだけでなく、様々な様相でSC脂質がアトピー患者において不適切に生成・分泌されていることがわかります。このような現象をlipid abnormality(脂質異常)と呼びます。このキーワードで検索してみると、関連資料をいくつか見つけることができるでしょう。
Elias, P. M. (2014). Lipid abnormalities and lipid-based repair strategies in atopic dermatitis. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular and Cell Biology of Lipids, 1841(3), 323–330. doi:10.1016/j.bbalip.2013.10.001
とにかくセラミド。化粧品会社がセラミドを強調するのは、このような背景があるからです。では、セラミド配合の化粧品を使えば皮膚バリアは回復するのでしょうか?これに関する研究は見つけられませんでしたが、必ずしもそうとは言えないでしょう。その理由は、セラミド成分の化学的作用が重要なのではなく、セラミドをはじめとするSC脂質が互いに並んで形成する物理的な構造がSCで役割を果たすからなのです。
そのため、外部から化粧品であれ軟膏であれ成分をただ押し込むことが重要なのではなく、皮膚自体の機能が円滑に行われ、皮膚バリアを自ら構成できるよう促す方法を考えることが、私たちのすべきことではないかと考えています。
要約
- 化粧品の広告でよく耳にする「セラミド、セラミド」というものが、まさにこのセラミドであり、SC脂質における主要なテーマである。
- 皮膚バリアを回復する方法を多角的に検討しよう。
お読みいただきありがとうございました。