睡眠を減らすと太る理由 — 漢方医が見た睡眠と体重の関係
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深夜2時、冷蔵庫を開ける理由
先日、30代後半の会社員の方が来院されました。仮名でジウンさんとしましょう。運動も続けていて、食事にも気を遣っているのに体重が減るどころか増えているというのです。
「先生、残業が終わって深夜にラーメンを作って食べるのをどうしても我慢できないんです。こんなに意志力がないのかって…」
こういう話を聞くたびに少し胸が痛くなります。自分を責める方が本当に多いんです。でも、ジウンさんの生活パターンを詳しく聞いてみると、平均睡眠時間が5時間未満でした。問題は意志力ではありませんでした。
意志力の問題ではありません
睡眠が不足すると、空腹感が物理的に変わります。脳が「エネルギー不足」という緊急信号を送るんです。睡眠不足の状態で夜食が食べたくなるのは、意志が弱いのではなく、体が生き延びようとして送るサインです。
私の経験では、体重が落ちないとおっしゃる方の半数以上が、睡眠時間6時間未満です。食事相談より睡眠相談が先になるケースが、思っている以上に多いんです。
ホルモンが変わると食欲は自分でコントロールできなくなります
シカゴ大学の研究チームが興味深い実験を行いました。健康な成人の睡眠を4時間に制限したところ、レプチン(leptin)という満腹感ホルモンが約18%減り、グレリン(ghrelin)という空腹感ホルモンが28%も上がりました。グレリン対レプチンの比率が71%まで崩れてしまったんです。
簡単に言えば、「お腹いっぱい」と知らせる信号が弱くなり、「お腹すいた」という信号が強くなるということです。さらに、この状態では特に炭水化物 — スナック、パン、ラーメンなど — が食べたくなるという結果も出ました。
別の研究では、1日の睡眠が6時間以下の人は肥満リスクが30%以上高かったのです。睡眠1時間の差が体重計の数字を変えるわけです。
漢方医学はこう見ます
私は診察しながら、睡眠不足が作るパターンを繰り返し目にします。漢方医学ではこれを2つの経路で説明します。
1つ目は、肝気鬱滞(かんきうったい)です。ストレスと睡眠不足が重なると、肝の気が鬱滞します。気が滞ると消化も遅くなり、循環も悪くなり、特にお腹に脂肪が溜まりやすい状態になります。
2つ目は、脾虚(ひきょ)です。脾臓の機能が弱くなると、食物をエネルギーに変える力が落ちます。変換されなかったエネルギーが痰飲(たんいん)という老廃物として蓄積し、体が重くなり、むくみが来て、最終的に体重増加につながるのです。
だから私はダイエット診療をする際、必ず患者さんの睡眠パターンを尋ねます。睡眠が整っていない状態で食事だけ調整するのは、底の抜けた桶に水を入れるようなものですから。
今日からできる5つのこと
- 睡眠時間の確保 — 7時間が最低ラインです。 6時間と7時間の間にホルモンバランスが崩れる境界があります。
- 就寝1時間前にスマートフォンを置く。 ブルーライトがメラトニンの分泌を妨げます。
- 夕食は就寝3時間前に終える。 胃に食物が残っていると睡眠の質が下がります。
- 夜食が食べたくなったら白湯を一杯。 グレリンは胃が空のときに多く分泌されます。
- 昼寝は20分以内に。 30分を超えると夜の睡眠に影響します。
睡眠と体重、一緒に整える漢方的アプローチ
睡眠が不安定な方には、疏肝解郁(そかんかいうつ)という方向でアプローチします。肝の鬱滞を解いて気血の循環を回復させるのです。睡眠が安定してくると、レプチンとグレリンのバランスも自然と戻ってくるケースをよく見ます。
体重減少が目的なら、まず睡眠を整え、その上に食事調整と漢方処方を重ねる順序が大切です。睡眠が不足した状態では、どんなに良い処方をしても体が受け入れる準備ができていないからです。
よくある質問
週末に寝だめすれば回復しますか?
完全には回復しません。平日に積み上げた睡眠負債を週末2日で返済するのは難しいです。平日の睡眠を30分でも増やす方がずっと効果的です。
よく眠れているのに痩せません。
睡眠はいくつかのピースの一つです。睡眠が十分でも、食事、活動量、体質的要因が複合的に作用します。こういう場合は体質診断を通じて、どこにボトルネックがあるか探る必要があります。
睡眠薬で眠る睡眠も効果がありますか?
薬で誘導した睡眠は自然な睡眠と質が違います。特に深い睡眠(徐波睡眠)の割合が低くなり、ホルモン回復効果が減ることがあります。できれば自然な睡眠習慣を作ることを先にお勧めします。
まとめ
ジウンさんは今、睡眠時間を6時間半に延ばす取り組みをしています。まだ完璧ではありませんが、夜食の衝動が目に見えて減ったと言っていました。私はこの変化が最も意味深いと思っています。食事を変える前に、眠りを変えること。
太るのがすべて自分のせいではないかもしれません。今夜、30分だけ早く目を閉じることから始めてみませんか。
体質によって睡眠と体重の関係は変わることがあります。気になる方はオンライン診療のご案内からお気軽にご相談ください。
参考資料